2019年6月18日、ガガガ文庫から発売された『千歳くんはラムネ瓶のなか』、略称『チラムネ』をさっそく読んでみました。最近は電子書籍も当たり前のように普及して、発売日になった瞬間に読めるのはすごいですよね。
試し読みレビューの記事でも書きましたが、いやぁ、リア充って凄いですね。作中の登場人物たちが毎日毎日楽しそうで、平凡な学生生活を送っていた私からしたらすごく眩しかったです。
さて、本記事では個人的に気に入った描写等をざっくりレビューしていこうと思います。以下ガッツリネタバレ書いてありますので、読む前の人は要注意です!
主人公とそのとりまきによる「リア充グループのやりとり」が読んでて心地よい
主人公の千歳 朔(ちとせ さく)くん。容姿はもちろんイケメン。スポーツ万能で勉強もできる、そしてコミュ力めちゃ高。考えられるリア充要素を兼ねそろえ、それに加え八方美人な面はありつつも、引くところは引く洞察力も抜群…時に熱くなる人間臭さ…まさに僕が考えた最強ヒーローみたいな男です。
現実にもなかなかいない(というか多分いない)レベルのリア充超人ですが、ただ高スペックなだけではスクールカーストの頂点には立てない…そう、彼の周りにはその地位を確かなものとする圧倒的な「要素」が存在するのです…
そうです、圧倒的美少女たちです。この時点でもうカースト上位だろうがなんだろうが超超超勝ち組な気はしますが、圧倒的な地位を決定づける要素としてはかかせません。
夕湖の圧倒的「正妻」感
一巻の表紙にもなっていて登場する機会も多かった夕湖。朔くんにべたぼれで圧倒的「正妻感」を見せつけてくれました。見るからに軽そうな雰囲気の容姿で、実際に所謂キャピキャピしてるギャル系のヒロインではあるのですが、喋れば喋るほど知的な面が垣間見えるのはハッキリ言ってずるいです。
・読む前
私「正妻かぁ…独占力強そうだし他のヒロインの存在が霞まないかな…(若干不安)」
・読んだあと
私「夕湖ちゃんすこ・・・…こんな子と学園生活送りたい人生だった」
…みたいに印象が180度変わってしまいました笑。個人的にビジュアルは他のヒロインの方が好きだったりするのですが、キャラメイクがうますぎる…
好きという感情を隠さない圧倒的自信
作中の裏主人公(?)の引きこもっていた健太くんを救いに行く描写で、夕湖はリア充に偏見をもつ健太くんに〇奴隷だの〇ッチだのめちゃくちゃに罵られますが、「〇奴隷はいいけどビッチはひどいんじゃない?朔一筋だもん」と一蹴します。正直ここ笑いましたが、これだけに留まらず夕湖の演説は続きます。
健太「お前もどうせ千歳のご機嫌取りで来ただけで俺なんかどうでもいいんだろ?」
夕湖「え、普通にそうだけどなにがいけないの?私は大好きな朔の頼みだから引き受けたし、困ってるなら助けになりたいって思った。ご機嫌なんてとれるだけとりたい。朔の頼みじゃなかったら名前も知らない人が学校に来れないからって登校できるようにしてあげたいなんて思わないんだけど」
学年一の美少女にこんだけ言わせる朔くんマジで最強すぎる…これが「正妻」たる所以なんですね。
あと、終盤のスタバのシーンのクライマックスで登場してきた時は興奮しました。夕湖登場で朔くんが「明らかにパニくってる。めちゃくちゃレアな光景だ」という健太くんの台詞描写から、夕湖という存在の特別性が垣間見えた瞬間でした。やはり「正妻」強しなんですかね?現時点では夕湖が他ヒロインとりも一歩も二歩もリードしているように見えます。
私服がめちゃめちゃかわいい
こんな美少女高校生いません!いたら紹介してください(狂言
出番が少なかったが存在感は示した「No.2」
妾の優空。一巻では夕湖に比べて出番が少なく目立たなかったですが、クラスの不良グループ(?)に絡まれるシーンで「圧倒的余裕」を醸し出していました。「なんかあんたらふたり(健太と優空)、千歳くんのグループにしては地味だよね」の嫌味には「あはは、それは自覚してるよ。」と軽くスルー。うーん強い…
やっぱり主人公にとって「特別な存在」
また、言うだけ言って去っていく不良たちを引きとめ、朔くんがこう言っています。
「優空は確かに緩衝材のぷちぷちぐらい地味だが、そのぷちぷちが衝撃から守ってくれているからこそ、そのままの価値を保っていられるんだ」
わざわざ立ち去ろうとしている所を止めてまで言ってるので、ハッキリとした描写はなかったけど「俺の優空を悪く言うな」という朔くんの熱いメッセージが込められてる気がします。こういう細かい描写、いいですよね。
地味だけど存在感だしまくりな優空。今後の活躍に期待です。このままのマイペースな優空だけ見ててもいいかなーって気持ちもありますが笑
小さいけど大きい「陽」という存在
まず言わせてください、この子…
身長ちっさ!!!?超かわいいいいいいいいいいいい><;
いや、、バスケ部だからそこそこ身長あるのかなと勝手に思ってましたが、まさかヒロインの中で一番小さいとは…この設定、GOOD過ぎるでしょ。
「いいからいいから、陽ちゃんに話してごらんよ」
悩んでいる朔をバスケの賭け勝負に誘い、「わざわざ賭け勝負に負けたって理由をつくってあげる」描写がありましたが、一瞬で陽ちゃん好きになりました。え?こういうキャラだったの?体育会系脳筋キャラじゃないの???
違うんです。チラムネは違うんです。
陽ちゃんも例にもれず、発言が知的で尊かった…一巻で一二を争う好きな描写かもしれません。
主人公の野球部時代
朔の「悩み」に対して考えを伝え、解決に導いた陽。これは朔という「完璧超人」を理解し、朔という人間の「本質」を理解してないとできないことだと思います。
朔と陽とのシーンで気になる描写があったので触れてみます。
「ねぇ千歳、この公園て昔は市営球場だったんでしょ?」
「らしいな。俺は一度もここで試合したことないまま取り壊された」
「きれいだよね」
「きれいだな」
なんですか、これ
めちゃめちゃ意味深なやり取り…「陽がなにかを言おうとしたのか、思いついたまま口にしたのか俺にはわからない。」と朔が考えを巡らせています。また、「ただ、同じ場所で同じ景色を見てきれいだと思えることが、不思議とうしかった」と続けています。これ、過去になんかあったでしょ(名数理)
ただの深読みかもしれませんが、「朔が野球をやめた理由」に関係してそうな気はしますね。朔と陽、、夕湖や優空と比べて少し距離のあるヒロインなのかな?と思ってましたが、案外そうでもないか…
陽ちゃん、完全ノーマークでしたが面白そうなヒロインです。今後が楽しみ♪
夜に電話をかけてくるヒロインはあざとい
陽の項で一二を争う好きな描写と言いましたが、もう一つが悠月とのLINE電話シーンです。
「こんばんは。語りませんか?」
「こんばんは。語りましょうか」
朔と一番浅い関係の悠月。電話がLINEでってのが現代っ子ですね。私が学生の頃は無料通話を超えそうなら一旦通話を切るという淡いやり取りをしてました。淡い青春ですねぇ…(老
脱線しましたが、悠月との電話の内容。小気味の良い茶番かお互いの腹の探りありフェイズに突入してくわけですが、私は悠月の方が一枚上手に見えました。
この会話劇は見どころが多すぎて文章にまとめきれません…リア充同士の通話ってこんな感じなんですかね?私はしりませんねぇ…(悲
「例えば、私の彼氏になってみませんか?」
「……とかね」
あの、裕夢先生、これずるいでしょ???何急に告白させてんですか(興奮状態
試し読み記事で悠月が一番好きだと書きましたが、私の中で揺るぎない不動の1位になりそうです。
最後まで掴めなかった「幻の女?」
いやほんと、4人のクライメイトだけでもお腹いっぱいなのに、なんでもう一人いるんだ…(嬉
最後の最後まで掴めなかった明日風先輩。「まるで、幻の女を追いかけているみたいだ」と朔は言っています。いやまじでそれ。
主人公の憧れの存在
そういえば「朔の好きな人って…?」
美少女に囲まれた超絶リア充の主人公くん。その中でもやはり本命っていう存在はあるはず…「正妻」と言われている夕湖は周りからの評価に過ぎないし…
「きっと君とは、こんなふうにおもいがけず会うからいいんだよ。憧れの先輩と、素敵な後輩の男の子でいるために」
「これ以上近づいたら、その関係性が崩れる?」
「あるいは、ね」
最終版の朔と明日風の一幕。
そもそも、朔が最終的に誰かと結ばれるとも限らないし、もしかしたら最後までハーレムを突き通すかもしれません。でも、どちらになったとしても、明日風の存在は「特異」です。
しかし、、この高校生とも思えないような会話よ…最後の最後まで知的なチラムネ、ステキです。
おわりに
ほぼほぼヒロインたちの感想記事になってしまったので、『チラムネ』のテーマでもある「リア充」について、私なりの解釈を書かせていただきます。
「無敵」なリア充
一巻の作品の大きなテーマになっていましたが、「リア充グループ」の朔は「非リア充グループ」の健太を不登校から救い出します。当然、お互いに価値観が違うわけですから衝突もするわけです。登場時の健太なんて「お前らみたいなリア充に話すことなんかない。」とむちゃくちゃな理由で拒絶しています。
これに対し朔は終始、「俺たちは自分が優れていると思っていない。当たり前のことをやっていたらこのポジションに立っていた。」をというリア充の定義を論じています。というか身をもって示してるって感じですかね。これ言われたらもう非リア充側は言う事ないでしょう?ていうかなんで非リア充側はそんなに噛みついてくるのよ?
人は「劣等感」を持つ生き物
「ただ存在してるだけで他人にマウントとってるんだよ、あんたらは‼」
健太が不登校になった原因のオタサーグループの蓮くんの発言です。めちゃくちゃな言いざまですが、言いたいことはわかります。人は優れて見える人たちを妬んでしまう生き物なんです…悲しいですよね。遺伝子レベルでそうなるように作られてるんですから。
前を向いて歩き続ければ誰でも「リア充」になれる
髪型、服装、コミュ能力…朔の導きで健太はリア充への道を歩み始めます。初登場の時と終盤の健太くんのキャラ全然違うのビビりますね笑
誰でも努力すれば理想の自分に近づける、他人を羨む必要もなくなる。あれ、そもそも「リア充」ってなんでしたっけ?
「リア充」=朔たちのような美少女に囲まれたハーレム生活を送る人を指すのではなく、自分に自信を持てる人間になれた=「リア充」なのでは?
正直目からうろこでした…もちろん、朔たちのような存在もキラキラしてて「リア充としての指標」にはなるでしょう。ただそれはあくまで指標一つにすぎない。
「最後にみんなで笑えれば、それで最高にハッピーなんだ」
朔の作中のこの言葉、こういうポジティブなことが言える人間になりたいものですね。
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今のところぶっちぎりで悠月が好きです。二巻も楽しみにしています!